47都道府県の学生を福島・宮城・岩手の被災地に送る「きっかけバスプロジェクト」

都道府県の学生を福島・宮城・岩手の被災地に送る「きっかけバスプロジェクト」。その発案者でゼロから立ち上げたプロジェクトの運営者である白井さん。そのポジティブなパワーはどこから産れてきたのか。このプロジェクトが震災後の日本社会にとってどのような意味があるのか。本誌ボランティアスタッフ(阿佐ヶ谷美術専門学校の学生)とともにお話を伺いました。

進路を変更してまでやりたかったこと。自分を変えた被災地での経験。

「私がはじめて被災地を訪問したのは震災から1年後、2012年の春の南三陸でした。社会人の寄付によるボランティアバスで、友だちの誘いになんとなくついていくような気持ちでした」
はじめての被災地で大きな衝撃をうけた白井さん。家も家族も、なにもかもすべてを失った人。それでもやさしい笑顔で迎えてくれる人。被災地域の人びととのふれあいの中で、自分自身を見つめなおしていきます。
「当時の私は大学4年生。就職も決まり最後の学生生活が始まろうとしている時期。その頃ちょうど、家族のことや友人のことなどで悩みをかかえていました。被災地で出会った人びとの悲しみにくらべると、なんて自分は甘いんだろう。家族を大切にしよう、小さなことで悩むのはやめよう。そして、本当に自分がしたいことをしよう、と思いました」

 白井さんが被災地で聞いた印象に残る言葉があります。「過去の震災の教訓がきちんと活かされていれば、もっとたくさんの命が助かった」。ほんの震災2年目にしてすでに関心が失われていくのを感じる中「東北にかかわる人を増やしたい、復興や防災に少しでも関心を持つ人を増やしたい」という思いを強くしていきます。そしてすでに決まっていた進路(就職)を変更し、大学に残って被災地支援に取り組むことを決めてしまったのです。
 その約1年後の2013年5月末、ボランティアバスで一緒だった仲間とはじめたのが、社会人からの寄付を集めて福島・宮城・岩手の被災地に47都道府県の学生を送ること。そこから地域に戻って東北の現状を身近にいる人に伝え、復興と防災の活動を息長く続けていくこと。つまり「きっかけバス47プロジェクト」です。

どんどん大きく広がっていく学生のプロジェクト。 いろいろな方からいただいた善意の重みに、しっかりと応える。

 はじめは友人とふたりではじめようと決めたプロジェクト。そして震災直後から社会人&学生向けに行われていた「きっかけバス」というプロジェクトがありました。ここに参加していた学生が関東近郊に集中していたため、その全国版をやろうと考えます。地震に限らず自然災害はいつどこで起きてもおかしくない状況。47都道府県を巻き込んだきっかけバスを発足し、公益社団法人 助けあいジャパンのプロジェクトとしてスタートします。
 2人は自分たちで新たな仲間を集めて企画を詰めていきます。「2014年3月11日までに47都道府県から大学生のボランティアバスを出す」「47の各都道府県にリーダーをつくりリーダーが各地域で参加者と資金集めをする」「資金は社会人からの寄付で賄う」など、より具体的になっていきます。
 活動には人とお金が必要。9月に被災地で全国の各県のリーダーだけを集めたリーダー研修合宿を行うことを決め、そのための資金(寄付)集めをクラウドファンディングの「READY FOR? (注1)」で呼びかけます。文章や写真などを工夫して支持を集めなんと約500万円を集め無事に研修を実施します。そして11月には観光庁長官を表敬訪問、この様子をテレビが取材に、そして岩手日報ではなんと新聞の1面に取り上げられます。たったふたりではじめた活動が企業や行政を巻き込みながら、全国規模に大きく広がっていきます。

 やがて、白井さんはその責任の重さに気づきます。「READY FOR?」や街頭の募金活動などで見ず知らずの方々から、そして自分の知り合いから。いろいろな人の善意の寄付をお願いしました。とくに東北にかかわるきっかけをもらった方がたに。その方がたの気持ちにちゃんと応えていかなければ、という思いで、さまざまな苦労を乗り越えていきました。実は快く協力してくれた方々もいれば、一方でさまざまな意見や批判の声もいただきました。

現在1711名の参加者が各県各地域で報告会を開催中。

 1月25日ようやく全県のリーダーが決定し、なにはともあれ2月1日にはチーム岐阜が出発し、きっかけバスが運行開始となります。チーム大分は記録的な大雪の雪害にあい長い時間の雪の中で足止めとなりました。白井さんは「自分たちも被災する、その心構えと準備が必要」と防災の大切さを実感したといいます。

 そして311前日の2014年3月10日 全県が東北に向けて出発。4月30日 寄付金4420万円、支援者1559人に。この方々の思いにちゃんと応えなければ、と話していた白井さん。まだまだこれから。しかし「きっかけバス」での経験、感じたこと見てきたことを地元に帰って地元に伝える動きが全国で始まっています。たとえば○○県のリーダーが地元の中学校や高校で生徒たちに被災地での経験を伝える機会がありました。メンバーの多くはきっかけバスを通じて「防災」の重要性を感じてきました。教員の防災教育・意識を高めることは多くの子どもたちを救うことが今回の震災で明らかになりました。白井さんたちは今、学校教育を通じて学生たちが防災教育にかかわっていく「仕組みづくり」ができないかと考えています。

 きっかけバスの運営リーダーたちはもちろん、参加者1711名のそれぞれの活動が、震災を教訓とした新しい地域づくりを実現すること。そのとき多くの支援者の思いに応えたといえるのかもしれません。
白井さんは2014年4月より公益社団法人 助けあいジャパンに正規職員として就職することになりました。
「本当に多くの方々に支援していただきました。協賛していただいた企業の方々からは個人的にも多くを学ばせていただきましたし、こんな社会人になりたい、と思えるような出会いがありました。感謝の気持ちを大切にしながら、被災地や地域の問題解決にかかわっていきたいと思います」
これからは学生のボランティア活動ではなく、「仕事」として向き合っていきます。これからが正念場なのかもしれません。Onedayはこれからも白井さんや学生さんたちに注目していきたいと思います。

 

(注1)インターネットを介して不特定多数の個人から資金(支援金)を集めるサービス

 

 

取材を終えて・・・。

Onedayのボランティアスタッフの学生たちが取材しました。

彼らは阿佐ヶ谷美術専門学校に通う未来のクリエイターたちです。

Onedayでは編集者・コピーライターの学生ボランティアやプロボノを大募集中です♪

取材を終えて記念撮影♪

今回の取材は学生ボランティアが取材する機会としてセミナー形式で白井さんにお願いしました(白井さん、無茶ぶりにご対応ありがとうございました)。

本来は被災地へ行くのが一番ですが、みながきっかけバスに乗れるわけではありません。それでもせめて活動をしている人の言葉を直接聞くことは、本誌にかかわる学生スタッフにとって意義のあることと考えました。今後も学生のみならず取材を通じて人と人が出会う機会を作れたらと考えております。

先日は貴重なお話を聞く機会を頂きありがとうございました。今回の取材に参加させて頂いたことで知り得たことが沢山ありました。 学んだことは沢山ありますが、一番勉強になったことが「人によって震災に対する思い、吹っ切れ具合が全く違う」ということです。同じ被災地にいる方でも、自分の周りの状況や捉え方の違いで、震災に対する考え方が全く違うということは意外でした。正直、震災から三年以上経ち、全体的にみんなが復興の進行とともに元気になっているものだと思い込んでいました。しかし、白井さんのお話から、人によっては全然回復していない人もまだまだいるのだということがわかりました。 また、きっかけバスプロジェクト成功までのお話を聞いて、白井さんの行動力に驚かされました。自分が同じ立場だったらと考えた時、募金活動までは出来ても、そのあとの自分から何かを始めるという行動まで踏み出すことは難しいと思いました。ましてや善意で行っていることに対して批判や中傷を浴びせられたら、途中で意思が折れてしまい尚更です。そんな中、こんな風に成功まで収めた白井さんの意思と行動力は本当に凄いと思いました。 これから私達が編集を行うフリーペーパーを通じて、少しでも震災復興のお手伝いになれたらと思います。そして、今回学んだことが一人でも多くの方に伝わるようにしたいです。

 (3年 高橋菜奈)

今まで東北に関して興味がありつつも、あまり深く考えたことはありませんでした。ですが白井さんのお話を聞いたり、活動している映像を見ることで気持ちが引き込まれました。全くちがう土地に住んでいても自分たちの出来ることを何かしたいと思いました。東北の人たちがみんな幸せに暮らせることが復興したことになると思っていると聞きました。 それで私たちができることは今回onedayというフリーペーパーを作るということです。先輩とみんなと一緒にいいものが作れたらいいと思います。

(2年 大橋まり)

先日はonedayの取材に参加させていただき、ありがとうございました。 取材に参加して僕が最初に思ったことは、白井さんの行動力はすごいということです。僕とそんなに年齢が変わらないのに、自分で何かしなければならないと思い、行動を起こすのは、思うだけでなかなか出来ることではないと思います。白井さんが友達と協力して行動したから日本全土を良い意味で巻き込む壮大なプロジェクトが実現したのだと思いました。同じくらいの年齢の人が、何かしなければならないと思い実際に行動しているのを見ると、自分は何が出来る?いや、何をしているのだと思います。白井さんの話を聞いていて、自分が恥ずかしく思いました。 そして、こんな自分でも些細なことでも何か出来ればと思いました。今、自分にできることは、フリーペーパーのonedayを作成することだと思います。自分の持っているスキルで、デザインの力で紙面の中の震災に関する情報を発信出来ればと思いました。 情報が見やすく、分かりやすく、伝わるレイアウトを心がけます。 これからもよろしくお願いします。

(3年 神田怜 )

白井さんから直接KIKKAKE BUSのお話、被災地のお話を聞く事ができて本当に良かったと思いました。大変なことが起きているという事は分かっていたのですが、テレビの中の世界というかんじでした。白井さんのお話を聞いたり、KIKKAKE BUSの活動の動画を見てからは自分の住んでいる街がこの状態になったらどんな気持ちだろうとか自分もいつ被災するか分からないと自分に置き換えて考えることができるようになりました。 また、被災地の状況を知ることで東北出身の方には当時被災して辛い思いをした人もいるかもしれないということにも気づきました。今まで安易に地震のことを話していたけど中には地震の話は本当はしたく無い人だっていたかもしれないと思うと凄く申し訳ない気持ちになりもやもやとしたものが胸の中でいっぱいになってそのことを喋り出したら涙が出てしまいました。 被災した方も人それぞれで、もう吹っ切れて震災で体験した出来事を面白おかしく話してくれる方もいれば、まだ海が怖くて入れない様な方もいて、距離感が難しいというお話も聞きました。 自分の知り合い、これから知り合う人に被災した人がいるかもしれない。みんながみんな吹っ切れているわけじゃない。自分が被災地の状況を「知らない」と言うことが人を傷つけるかもしれない。自分達はもっと被災地の状況を知って、それを忘れないことが大切だと思いました。

(2年 榎本彩花 )


私はインタビューに失敗したことがあり、今回一緒に参加させてもらうことで話を聞くと同時にインタビューの仕方の勉強をしたいなと思っていました。 Onedayのスタッフさんのメモした文字の量に驚きました。4~5ページぐらいにわたって文字がびっしり書いてあり、私は話を聞くだけで精一杯でした。 あと白井さんもスタッフさんも人を紹介したりして、人脈を大切にしてると感じました。 話は白井さんのこのプロジェクトの進め方や、プロジェクトに対しての情熱が伝わってきたした。最後の質問の時に近い人が集まらないというのが、意外であり何となく分かるきがしましす。あと人間関係の距離の取り方は本当に難しいと改めて考えさせられました。

(2年 広瀬凛 )

私は自分でインタビューするのもほとんどありませんが、 インタビューを見学するのは初めてのことでした。 東北地震が起きた当時からの東北の様子というのは、ニュースや新聞でしか 情報を得ることができませんでした。ですが今回のインタビューの見学ということで貴重な機会をいただき、現状を少しでも知ることができました。 映像を見たときは、もし自分のすぐ後ろに津波が来たらと想像したら、何度も鳥肌が立ちました。それだけでもとてつもない恐怖を感じました。 私が中学校のときの修学旅行先が福島県でした。その福島の方の家に一泊だけ泊まったのですが、その短い時間の中で、遺跡発掘現場や博物館に連れて行って下さったり、野草取り、キノコ栽培など多くの体験もさせていただきました。すごく温かい人たちでした。今どのように過ごしてるのかわかりませんが、恩返しのつもりで頑張って作っていきたいと思います。ありがとうございました。

(2年 吉本邦弘 )

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